フェラーリ ディーノ206/246GTのモデル概要
フェラーリ ディーノ206GT及び246GT/GTSは、フェラーリが初めて製造したミッドシップスポーツカーです。フェラーリ史上初のV型6気筒エンジンを搭載した市販車で、現代におけるV型8気筒エンジンを搭載するフェラーリの始祖的存在としても知られています。また、クラシック・フェラーリを代表するモデルであり、クラシックカーの代名詞とも言える名車です。
アルフレッド フェラーリによるV6エンジンの構想
フェラーリ・ディーノ206GT及び246GT/GTSは、フェラーリ社の創業者エンツォ・フェラーリの長男で、24歳の若さで亡くなったアルフレード・フェラーリ(愛称:ディーノ)が、病床でアイデアを出したとされるV型6気筒エンジンを搭載したモデルです。当時、12気筒エンジンを専門に開発していたフェラーリ社は、6気筒エンジンモデルをフェラーリとは別のクルマとして位置付け、それを「ディーノ」と名付けました。その為、標準ではディーノ206GT及び246GT/GTSには、「Ferrari」のエンブレムは付けられておらず、「Dino」のエンブレムが付いています。
ディーノ206GTの登場
フェラーリ・ディーノシリーズの最初のモデルとなる「ディーノ206 GT」は、1967年に登場します。総生産台数は152台と非常に少なく、そのうちの最初の3台は、ピニンファリーナ社が全て開発・生産したプロトタイプとなっています。その後、4台目以降は、スカリエッティ社が生産した量産モデルに移行しました。この年代のフェラーリの多くが、設計をピニンファファリーナ社が行い、生産をスカリエッティ社が行う体制になっていましたが、ディーノ206GTも同様の体制で生産されています。一方、エンジンユニットに関しては、フェラーリ社が開発し、フィアット社と共同で生産する体制がとられました。
フェラーリとフィアットの共同生産体制
実は、フェラーリ・ディーノが開発された当初の目的は、当時のフォーミュラ2のレースマシンに搭載するエンジンユニットの規定条件をを満たすためでした。しかし、当時少量生産メーカーだったフェラーリ社は、単独でそのレース規定である「連続した12ヶ月間に500台以上が生産された量産車のユニットを使用」をクリアする事は難しいと判断します。そこで、量産車メーカーのフィアット社に協力を依頼し、2社共同にてレース規定をクリアしようと考えます。エンジン設計はフェラーリ社が担当し、エンジン部品の製造をフィアット社が担当します。そしてフィアットで製造されたエンジン部品は、フェラーリ社に持ち込まれ、フェラーリの工場にて組み立てられました。そして、両社でこのエンジンを搭載したモデルをそれぞれ販売します。フェラーリ社では、ディーノ206GTという名のミッドシップスポーツカーとして、一方フィアット社では、フィアット・ディーノという名のFR駆動モデルとして、スパイダーとクーペの2車種を販売しました。その結果、このフェラーリとフィアットの2社が販売する合計3車種にて、無事にレース規程の販売台数をクリアしています。
ディーノ206GTのエンジン開発とメカニズム
アルフレード・フェラーリ(愛称:ディーノ)が構想し、フランコ・ロッキが設計した、排気量1,987ccのV型6気筒エンジンは、まず、レーシングカーの「ティーポ135B」で最高出力185PS/8,000rpm、最大トルク17.85kgmを発生させました。ただ、ディーノ206GTでは市販車という事から、公道での取り扱いを考慮し、最高出力を160馬力に抑えています。また、レッドゾーンは、メーター上、8,000回転からになっていますが、実際はレース用エンジンをデチューンしたものである為、ディーノ206GTのエンジンは、9,000回転まで回る極めて高回転型のエンジンとなっていました。
ディーノ206GTのボディデザイン
フェラーリ・ディーノシリーズのボディデザインは、全てピニンファリーナが担当しています。このボディデザインは、フェラーリ・ディーノのシリーズ全体で大きな変更はありませんが、その中で、ディーノ206GTを見極めるポイントは、エンジンフードの熱排出穴が6ヶ所×2列になっている事、ガソリン注入口は露出して独立した鍵付きキャップになっている事です。また、ホイールもセンターロック式となっています。そして、総アルミ製ボディが最大の特徴で、その結果、車重はわずか900kgとなっています。他に細かな所では、バックランプがリアバンパーに2つ装着されていたりします。ボディカラーは工場出荷時には、地味なメタリック系の色が多く、赤や黄は少なかったようです。
ディーノ246GTへのバトンタッチ
ディーノ「206GT」は、152台の生産を終えると、1969年にディーノ「246GT」へ移行します。ディーノ206GTのエンジンは、レーシングエンジンとして極めて高回転型だった為、一般には扱いにくく、その上、当時としても非力なパワーとなっていました。そのタイミングで、当初の目的であったフォーミュラ2レースの参戦条件をクリアした為、2,000ccという排気量にこだわる必要がなくなります。そこで、フェラーリ社では、フィアットと相談し、エンジン排気量を2,400ccに拡大し、車名も「ディーノ246GT」に変更しました。
ディーノ246GTの改良されたメカニズム
ディーノ「246GT」では、ディーノ「206GT」からエンジン排気量が約400cc増えた事により、最高出力が195馬力(注:北米市場モデルのみ最高出力180馬力)にアップしました。それに合わせてエンジンのパワーレンジも低回転化します。それによりディーノは、誰でも扱いやすく、スムーズな加速が味わえる魅力的なエンジンに進化しました。(のちに、このエンジンをベースにラリー用4バルブヘッドエンジンも開発され、こちらはランチア・ストラトスに流用されています。)
一方、ディーノ「246 GT」になると、総アルミ製ボディからスチール製ボディに変更されます。これは、ディーノ「246GT」が、今まで少量生産メーカーだったフェラーリ社が経験したことがないような販売台数になることが予想された為、大量生産可能なスチール製ボディへの変更が決定されました。これによりディーノ「246GT」では、車両重量は増えましたが、エンジンパワーがアップした事によって、結果として最高速度も235km/hに向上しています。また、このタイミングでホイールベースが60mm延長された為、ディーノ「206GT」に比べて直進安定性も大きく向上しました。その結果、ディーノ246GTは、当時のスポーツカーの中でも高い性能を持ちながら、一般的に扱いやすいながらモデルに生まれ変わっています。
ディーノ206GTとの外観上の違い
ディーノ「246GT」では、ディーノ「206GT」からエンジンフードの熱排出穴が2か所増え、7つの穴が2列に並んでいるデザインとなりました。また、燃料口が、キャップむき出しだった「206GT」に対し、フュエルリッドが付いてキャップが露出されなりました。さらにバンパーも若干厚めのデザインになっています。カラーはフェラーリとしての認識が確立したため、赤やコーポレートカラーの黄も多くなり、ディーノ「206GT」によく見られたメタリック系の色は少なくなりました。ちなみに工場出荷時の色は、ソリッドカラー16色、メタリックカラー14色と多彩なカラーが用意されていた為、現在でも珍しいカラーをまとった個体が出てくることがあります。
ディーノ246GTの生産時期による3つのシリーズ
一般的にディーノ246シリーズは、生産時期による細かい変更点で、3つのカテゴリに分類されます。
Lシリーズ(ティーポL)
ディーノ246GTとして最初に生産されたシリーズは、 “L”シリーズ(Tipo L)として知られ、357台が生産されています。このLシリーズは、ディーノ206GTと同じ短いホイールベースを持っていることが特徴です。また、フロントのコーナーバンパーはグリル開口部に食い込んでおり、リアのナンバープレート灯がバンパーコーナー端部に位置している事も見分けるポイントです。ホイールもディーノ206GTとは若干形状が異なりますが、同じセンターロック方式(ノックオフ式センタースピンナー)となっています。内装では、ディーノ206GTと同じようにヘッドレストがリアバルクヘッドに置かれています。ちなみにLシリーズは、基本的に246GTの為、ボディは鉄製となっていますが、ごく初期ロットのみ、残っていたディーノ206GTの部品が使われており、フロントリッド等の開口部がアルミニウム製となっています。
Mシリーズ(ティーポM)
次に、1971年のわずかな期間に507台が生産された “M”シリーズ(Tipo M)では、ヘッドレストがシートに直接つけられる形になったほか、エンジンとトランスミッションに一部、細かな変更がありました。一方、シャシは大きく改良され、リアのトレッド幅が30mm拡張されています。ほかにも、ホイールがディーノ206GTから続いていたセンターロック方式から、5穴仕様に変更されました。また、細かな違いではありますが、リアバンパーに2つ装着されていたバックランプが、中央に1つ搭載される形になっています。
Eシリーズ(ティーポE)
最後の”E”シリーズ(Tipo E)は、1971年に登場します。このEシリーズは、ディーノ246GTの中で最も生産期間が長く、生産台数も多いモデルです。Mシリーズからもう一段、エンジン、トランスミッションが改良され、ディーノ246GTシリーズの完成形となりました。ボディパネルは、大型のプレス機で製造されるようになり、フロントコーナーバンパーは、グリル開口部に食い込まない短い形状になりました。そのほか、フロントコーナーバンパー下の冷却ダクトは、角形タイプから丸形に変わります。さらに、リアのナンバープレート灯がトランクリッド後端部に設置され、クロームメッキ仕上げの角形形状に変わっています。また、生産の途中からワイパーの支点が左ハンドル車では中央から右側に移動しています。(右ハンドル車では中央のまま変更されていません。)他にもクーラー付きの設定もできるようになったり、オプションでフレアフェンダーと太いアルミニウムホイールとデイトナ同仕様のシートを用いた、通称デイトナバージョンを選択できるようにもなりました。
また、このEシリーズでは、出力が180馬力に抑えられた北米仕様モデルが1971年の終わりから導入されています。この北米仕様では、法的規制の変更でフロントマーカー、サイドマーカーが角形形状になり、さらに赤いリアサイドマーカーが取り付けられています。また、1972年からは、タルガトップ型のオープンモデル「246GTS」がラインナップに加えられています。
タルガトップボディを持つディーノ246GTS
1972年からは、タルガトップ型のオープンボディを持つ「246GTS」が追加されました。基本的なメカニズムや性能は、ディーノ「246GT」と同様ですが、オープンモデルという事もあり、北米市場での販売が好調でした。ちなみに、ディーノ246シリーズの総生産台数(3,761台)のうち、「246GTS」は、1,274台となっています。
フェラーリ ディーノ206/246GTの諸元表・スペック
販売期間 | 206GT:1967-1969年、246GT:1969-1974年、246GTS:1972-1974年 |
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生産台数 | 206GT:152台、246GT:2,487台、246GTS:1,274台 |
ボディスタイル | 206GT:2ドアクーペ、246GT:2ドアクーペ、246GTS:2ドアタルガトップ |
サイズ(全長×全幅×全高) | 206GT:4,150mm×1,700mm×1,115mm、246GT:4,240mm×1,700mm×1,140mm、246GTS:4,240mm×1,700mm×1,140mm |
車両重量 | 206GT:900kg、246GT:1,080kg、246GTS:1,172kg |
エンジンタイプ | 206GT:水冷V型6気筒DOHC 1,987cc、246GT・246GTS:水冷V型6気筒DOHC 2,418cc |
最高出力 | 206GT:180hp/7,400r.p.m、246GT・246GTS:195hp/7,600r.p.m |
最大トルク | 206GT:17.85kgm/5,600r.p.m、246GT・246GTS:22.9kgm/5,500r.p.m |
ミッション | 5速MT |
駆動形式 | MR |
サスペンション | 独立型ダブルウィッシュボーン+コイルスプリング |
最高速度 | 235km/h |
価格相場
フェラーリ ディーノ206GT
近年のクラシックカー相場の高騰により、少量生産だった1960年代までのフェラーリは、軒並み1億円超となりました。その影響も受け、1970年代のフェラーリを代表するディーノシリーズも全体的に高騰しています。その中でも「206GT」は、生産台数が152台と極めて少なく、ディーノシリーズのプロトタイプと言える貴重なモデルの為、一足先に雲の上の存在となっています。実際の現存台数は、80台にも満たないとも言われていますので、今後も極めて高額な取引相場が続くでしょう。
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フェラーリ ディーノ246GT
量産型となったディーノ246GTは、206GTに比べ若干取引相場は低くなっていますが、それでもクラシック・フェラーリということもあり、取引価格は常に高値安定です。一時期リーマンショックの影響で価格が下がった時期もありましたが、そこから大きく値を戻しており、今後も長期的に価格上昇を続けていくでしょう。
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フェラーリ ディーノ246GTS
フェラーリ・ディーノシリーズで唯一のオープンモデルである「246GTS」は、クーペモデルの「246GT」と同じような価格変動をしていますが、取引価格は「246GT」に比べて若干高額で取引されています。これは、クラシックカー取引の最大マーケットである北米市場において、一般的にオープンモデルの方が人気があり、高値で取引される事が理由です。
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バイヤーズガイド
フェラーリ ディーノ206/246GTの購入の際に気を付けるポイント
フェラーリ・ディーノは、クラシックカーの中でもトップクラスの人気モデルです。それゆえ、各年式の違いでも評価される非常に奥の深い車種です。その為、個体のコンディションはもちろんですが、生産台数の少ない希少なシリーズや、欧州仕様や北米仕様など、細かくチェックしてから適正な価格で購入する事をおすすめします。また、クラシック・フェラーリの取引相場は、経済動向に影響を大きく受けますので、全体的な相場感も含めて購入タイミングを判断してください。
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